Asia-Pacific Association for
Machine Translation

講演会 ジョナサン・ルイス氏

‐機械翻訳の社会的インパクト‐

 機械翻訳のこれまでの経緯を考えると、多分にロケット開発と共通する点がある。 一つには、どちらも研究開発の目的が達成されれば、人類の新時代が到来するという大きな夢を持っている。もう一つは、研究開発はある程度まで成功するものの、なかなか商業利用が可能になる段階までコストが下がらない、という大きなフラストレーションである。

 もし、機械翻訳の研究開発で飛躍的な進歩が実現されたなら、その社会的なインパクトにはどのようものがあるだろうか。例えば、マスメディアをはじめ多くの産業では、大手企業による寡占市場化が進むのであろうか。また、英語からの翻訳ソフトが市場の大半を占めることになったら、英語圏の思想や価値観が一層世界に広まることになるのであろうか。さらに「主要言語」(即ち、先進諸国で公用語として使用されている言語)の翻訳 ソフト開発が先行したら、「少数言語」の存続はより困難になるのであろうか。また、 オフ及びオンライン共同体の多くは、共通の母語を利用することがその共同体の大前提となっている。では自動翻訳を介した多言語共同体というものは、果たして形成されうるのであろうか。

 本講演では、機械翻訳の進歩により生じうる、以上のような問題点を取り上げ、皆さんとの活発な意見交換の場にしたい。


講師:Jonathan Lewis(ジョナサン・ルイス)
一橋大学 助教授

jonathan_lewis@mac.com
http://homepage.mac.com/jonathan_lewis

 自然言語処理と国際政治経済との関係について、様々な点から研究している。 文字コード問題、多言語オンラインコミュニティーの可能性、社会科学分野における 機械翻訳と制限言語の応用など。政治学博士。イギリス人。

 著書は西垣通・ジョナサン・ルイス共著『インターネットで日本語はどうなるか』 (岩波書店、2001年)、 『ブロードバンドで学ぶ英語』(単著、光文社新書、2002年)。